百姓のことわざ


風の吹いた夜
次の朝には早く起きろ
そう 俺は教えられて育ってきた・・・・

ちっちゃな台風のすぎた
次の気持ちのいい日
稲刈りの休みに
めずらしくもナシがでる

売っているのとはちょっと違う
ひん曲がって
皮もザラザラ
まるで誰かの根性
それでも肉の甘みは
どうにか俺たちの舌をだます

おやじ
おふくろ
そして俺

これがどこから出てきたのか
そんなくだらない話なんかしない
決まっているんだ
出てくるところなんて

あそこ−

部落に一本きりの大きなナシの木
ダンナのウラヤマ

風の日が三日もあれば栗御飯も食えるだろう
出稼ぎから帰ったら
きっと銀杏の入った のっぺ汁だ

俺たちがとりわけ早く起きる朝
いつも見張りをしていたと言う
今はいない人のことや
出稼ぎ先のできごとを
笑い話のように気軽に話しながら−

ところでいったい
自分の子どもに
俺はなんて言って 育てたらいいんだろう

まあ そんなこと考えることなんかない
五反百姓の跡取りに嫁にくる
ものずきなんか いるもんかよ

「さあ おやじ
もう ひとふんばり
終わらせちゃおう」

そう言って ぬかるみに入ったものの
さて本当に
なんて言って 育てたらいいもんだろうか

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