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奇妙な明るさに包まれた介護記録詩

詩集 介護日和 

 作者 ノブキ ソウイチロウ



 子育ても介護も親家族の個人責任だと押しつけるにはあまりにも荷が重い。サポートする社会や行政は頼りなく機械的だ。やむにやまれず同居すると〈杉並区役所からは/・・・同居家族ができたので/これまでと同じ介護サービスはできない・・・と通告された/略//清掃局からは/・・・ゴミは自宅前回収から集積所回収へ・・・と変更〉「引っ越しました」
 へとへとで疲労も限界となり、怒りや愚痴が聞こえてもおかしくない。ところが扱っている事実は一つ一つは深刻でも、詩では奇妙に明るく透き通った美しい朝のように描かれる。
 病院で出された超キザミ食の料理が何かを根自子さんに伝えるために厨房を見に行った作者はこう書く。〈食事はエサじゃない/名前をつければ料理になる/自分が経営者だったら絶対に掲示したいと思う〉「なに食べてるの?」 
 介護される根自子さんに現実の日々を少しでも楽しんでもらおうとする日々の努力と、現実から詩作までの間に重ねられた推敲が、詩を明るいものにしているのだろう。

▼私の好きな詩
 「あのひと」
わたしと あのひと(わたしの母)と このひと(伯母の根自子さん)三人の関係が暗示的に短く語られる。

▼私の好きな詩句
 こんな美しい朝はゴミ出しには不向きだ
  だからそんな作業を忘れるのは当然だ
  ちょっと意識が散歩しているだけ




▼記録年月日 2012年1月16日


ノブキ ソウイチロウ
   ↑ 横浜詩人会議のHPにも ノブキさんの詩人紹介コーナーが紹介があります。

改めて詩集データ

 詩集 介護日和
 作者 ノブキ ソウイチロウ  
 ページ数 17p
 詩の数  5編
 発行年月日 2011年12月20日
 出版会社  のんき堂
 頒価 300円


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