詩集を読む
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本来、〈いのちは輝いて/いまをしっかり生きている〉「雀たち」はずでなければならない。しかし規制緩和が進む労働のなかで追い立てられ〈夫は妻の痛みにまだ気づいていない/妻は夫を癒すゆとりがない〉「夫婦の風景」。この社会に作者はさわやかに切り込む。 〈職場規律が良心をがんじがらめに縛り〉〈サービス残業で家に寝に帰るだけ〉の正規職員、非正規労働者、住む家もないワーキングプアの実態をうたう。「公園と男」「おれに春が来るのか」等で浮浪者(?)を頭をたれずにうたう。そして問題の本質がどこになるのかを、言葉の力を借りて明らかにする。 見過ごしてしまいがちな小さな記事から、空想力を鋭く働かせて、社会の、政治の有り様を問いかける詩は、機械的でなく、楽しく、ほろりとし、怒りがしみ出てくる。現実社会への洞察と想像力、詩の力がないと、なかなかうまく作品にならないはずだ。作者の力をみる思いがする。 ▼私の好きな詩 ★「無言館」 キャンバスの裸婦が〈切羽詰まって描ききれず/軍靴の人となったあなたのいのち〉を未完のまま待っている。最終連は次のように締めくくられる。〈若い人がふたたび同じ思いをしないように/私の思いを伝えたい/言葉ではなく残された私の絵で〉 |
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改めて詩集データ 詩集名 阿修羅 作者 吉村悟一 ページ数 93P 詩の数 序の「阿修羅」を含めて 32編 発行年月日 2011年3月2日 出版会社 詩人会議出版 頒価 1800円 |
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