木の記憶 洲 史 木が 突然切り倒されたしまったので 登り道の木陰は無くなってしまった 残された切り株に腰掛けて 昨日まであった葉のささやきや木陰のやすらぎを思い起こそう 木で作った食器をかたわらに置いて いつまでも木のぬくもりを忘れずにいよう 切り株が朽ちていくのを見つめながら あなたの無念を記憶に深く刻もう けれど ごらん 切り株の側に 木の記憶を受け継いだ二本の若木が 空を仰いで枝を振り上げている
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